« 猫谷物語1-2-5-2 | メイン | スターウォーズ »

July 17, 2005

猫谷物語1-2-5-3

 チクワの首に赤い輪があり、それもハナの気に入らない物のひとつであった。横目で見ながら新しい父とハスキー犬のハッシを重ねていた。
—お前は猫じゃないか。人族と共に生きると決めたハッシとは違う。それを何だ。首の回りをチャラチャラさせて。—
 生来おっとりとした性質を持っていたのだが、チクワの出現により最近になって自分のいくぶんきつい顔立ちに性格が近づいてきたと感じていた。そんな自身の変化に気がつき恐れ腹をたてていた。幼いながらも強い自我が芽生えかけている自身を持て余していたのだった。

 チクワは大人の分別を持っていたから、ハナに対しては着かず離れずに終始穏やかに付き合った。もっともその分別くささがハナを逆上させ、少しの事でも何が気に入らぬのかしばしば家を飛び出させていた。キクはその度に困った顔をしていたが、夜風に頭を冷やしたハナがやがては何事もなかったかのように戻ってくるのを承知していたから、何も言わなかった。チクワもなかば諦めたかのように同様の態度であった。
 ハナは生け垣の棲家にいた。チクワも近くにいたが母の姿はなかった。このところ、ようやくチクワが傍にいても平気になっていたが、相変わらず口はきかず無視したままであった。それでもチクワは新しい父親としてできる事の一つとして美味しい食物を持ってきた。それが楽しくて仕方がないかのようであった。ハナは不機嫌そうに黙って食べていたが、内心は夜の明けるのが待ち遠しかった。
 ハナに兄弟が誕生するのだ。キクは出産のため棲家を出ていたのだった。
 高速道路脇の緑地帯、低木が繁るが中でもひときわ低いあじさいの群生する中。
 キクは産所で息を整えていた。陣痛は始まっていた。やがてハナの弟になるであろう雄猫の二匹を産んだ。キクは多くは産まずそのかわり体格の良い子ばかりであった。産後の処理をし、童の体を優しく舐めていた。まだ目が開かずフニャフニャした頼りないものであった。
「この子たちがやがてハナを支えてくれる。あの娘はまだ自分の優れた能力に気がついていない。無理も無い、幼すぎるもの。でも、やがてその時が来たらこの子たちがハナの力になってくれるであろう。大切に育てなければ。」


posted 久多@麩羅画堂 : July 17, 2005 04:11 PM

コメント

コメントしてください(お名前とメールアドレスは必須です)

コメント登録機能を利用するには、TypeKey トークンを設定してください。